バズベイトの特徴のひとつには音がある。バズベイトは、水面で扱うサーフェス系ルアーに見られるスプラッシュや波紋も発生させるが、バズベイトの発する独特のサウンドは、他のルアーでは出すことができない。バズベイトのサウンドとは、どういった種別の音かといえば、金属同士が擦れ合って出る音。そして、その音は金属疲労によって、よりキュルキュルといった独特な音を出す。
その音の良さを引き出すために、バズベイトをバスボートで引っ張りながら走る。こうすることで、高速でペラが回転し続け、激しく擦れ合うことで意図的に金属疲労を引き起こすことが出来る。また、ボートでなくても、車の窓から出して走ることで同じ効果を得ることもできる。
より金属音を奏でる方法は、他にもある。まずは、ペラを後ろで支えるリベット。通常リベットは、固定されておらず回る。回るということは、ペラとの接点が動くということだ。動くということは、接触が擦れ合う時間は減る。リベットを固定することで、ペラとの接触音をより出すことが出来る。また、リベットのペラと触れ合う部分には、凹凸がある。それも接地面を減らす要因になる。リベット側とペラ側の接地面をそれぞれヤスリ掛けし平にすることで接地面は増える。
ワイヤー部に対しても、意図的に金属疲労音を出すチューニングが可能だ。ペラが接触するワイヤー部に荒目のヤスリで傷をつけていくことだ。細いワイヤーに対しては、そのまま強度に影響する場合があるから、注意が必要だ。また、ペラのワイヤーの通す穴を、後方部だけ広げてやる。そうすることで、動きに幅が出て、接地音に幅を出すことが出来る。バズベイトというルアーは使えば使うほど、より味が出て、さらにそのサウンドには磨きがかかっていく。そこには、計算ずくでは引き出せないことがある。
また、バズベイトのペラの前方に、ゴミ除けと称してビーズが取り付けられている場合があるが、サウンドを優先させるが故に、ペラの動きや振動の制限となるうるビーズをあえて設定していない選択もある。あくまでも、サウンド優先の設計としていることの表れでもある。実際には、ペラの発する水流によって、ペラ前部に絡まるようなゴミが実際に、ペラに絡みつき、その回転に影響を与えることはほとんどない。
日本のモノづくりの基本には丁寧さがある。そして、緻密さや精密さもウリであるといえる。しかし、あまり綺麗に作りすぎると、機械的になり過ぎてしまうという側面もある。自然界には、直線や真円のものは存在しないように、自然とは、そういった”歪み”を良しとし、その”歪み”ゆえに、不確実性が様々に関連し成り立っている。より自然であるには、あまりに機械的であってはいけない。バズベイトの発するサウンドからは、そういったメッセージを感じ取ることができる。