スピナーベイトトレーラーを考える時、まず始めにスピナーベイトの特質について知らなければならない。スピナーベイトには、ヘッド部とブレード部があって、それがワイヤーで繋がれている。そのワイヤーを屈折した部分にラインを結び、引くことによって、オモリとなるヘッド部を下にして、ブレードが回転し泳ぐことによってサカナにアピールする。
ブレードは、回転することによって浮力を生じる。その浮力を抑えるためのヘッドウェイトであるから、ブレードが大きくなればヘッド部は重くしていく。スピナーベイトのヘッド部のウェイトは、水深を調節するものではなく、浮力を抑制するためのもので、ウェイトが違えど、同じレンジを攻めるためのものだという話はした。そのブレードが回転するとき、自然の力学はスピナーベイトに何を起こすか。ブレードは、引かれるラインに対して直線的になろうとする。つまり、水面に平行に近い形になる。だから、ブレードが複数枚付いていれば、それも直線的になって回る。決して鯉のぼりのように縦に並んで回るようにはならない。
ブレードがラインに対して直線的になるとヘッドはどうなるか。スピナーベイトのブレードが付いているアッパーブレードを床面に対して平行になるように持ってみる。それがスピナーベイトの泳ぐ姿勢に近い。ヘッド部を上に向けて、それに応じてフックは下にいく。その時、スカートは水流を受けてブレードと平行の位置になびく。スピナーベイトへのバイトは、下からスカートにめがけて来ることが多い。その時に下に出たフックに掛かる。これが、スピナーベイトの基本的な構造だ。だから、スカートに対してフックが小さいということは、ミスバイトを誘発しやすくなる。
では、こうした構造を理解したとき、スピナーベイトのトレーラーの役割りとは何か。まず、スピナーベイトの定番の形状である、スプリットテールタイプを考える。この基本的な形状に見覚えがあるとするなら、それは何か。凧上げをするときの足。その形状に似ていることに気付く。凧上げのときの足の役割は何か。それは、余計な回転や動きを抑制し、飛行姿勢を安定させるためにつける。スピナーベイトのトレーラーも同じだ。スプリットトレーラーを付けることで、スピナーベイト本来の姿勢を安定的にする。つまり、泳ぎ始めの立ち上がりを早め、障害物へのコンタクト時にその姿勢を早く回復する。これは、バイトを逃さないためにも重要な要素となる。
また、トレーラーは、スカートと同様に流れに乗ろうとするから、ブレードと平行になろうとする。この動きは、下に向いたフックを押し上げようとする力になる。それは、スカートへのバイトを、より確実にフックセットする要因になり得る。また、サカナは、ベイトのアタマにバイトする傾向があるため、長く見せることで、ヘッド部がアタマだと認識させやすくなり、ミスバイトを減らせる要因にもなる。
このようにトレーラーの役割や効果は様々だが、基本的な狙いは姿勢の安定であるといえる。ブレードとヘッドとフック、そしてスカートの関係性にみるスピナーベイトトレーラーの役割り。それを知ると、スピナーベイトというルアーが、侮れないルアーであることを改めて再認識する。