カルフォルニア・デルタへ
よりバス釣り中心のスタイルを目指し、いわゆる大手からベンチャー企業への転職を決意。転職前の5日の休みを利用し、マークのところを訪問することにした。マークは、以前のコロンビアリバーでのB.A.S.S.トーナメントの初日のパートナーだ。彼は、カリフォルニナ・デルタでガイドをしている。デルタでガイドすることを仕事としているマークと一緒に釣りをすることは、間違いなくそのフィールドの「クセ」を感じ取ることが出来ると思っていた。しかし、この「ねらい」は、意外な結果をもたらすことになる。
デルタへの釣行を決めたのは、2001年6月の中旬。7月の最初の週を休めることになったことにより、この休みを利用しアメリカへ行きたいと思っていた。ただ行くのでは面白くないので、マークに連絡を取ってガイドを出来るか聞いてみると、5泊3日(釣行日数は2日)のプランで、マークがガイド出来るのは、7月2日のみで3日は既にガイドの予約が入っているということ。マークは、知人に連絡と取ってくれて出発の2日前に7月3日のガイドとなるボビーを探してくれた。
飛行機の予約も行きがキャンセル待ちとなったが、どうにか取れた。今回訪問するコンコードという街は、サンフランシスコのダウンタウンから1時間30分ほど内陸に入ったところにある。そこに空港があるのだが、サンフランシスコからの国内線が乗り入れていない。そこからは、バスかバート(ニュートラム)を使う。モーテルはマークの自宅に近いプレミア・インを予約した。今回は、レンタカーは使わない。レンタカー自体はそう高くないが、保険が同じ位高い。マークに送り迎えなどお世話になることにした。
そして7月1日、関空を出発しサンフランシスコへと向かう。その前に海外釣行でのロッドパッケージの話。以前の参戦時はノースウエスト航空を使った。その際、ロッドパッケージ(バズーカーの様な)の別料金は必要無かった。しかし今回のユナイテッドは必要だと言われた。その金額はなんと、行きは19,800円!、帰りは84ドルとのこと。料金は現地で払うように言われたので、現地のバゲージクレイムで問い合わせても料金を徴収する人もいない。その場の流れで、結局料金を支払わずに、そのままバンバスを使ってコンコードへ向かうことになった。
モーテルに着いてから、ロッドパッケージのエクストラチャージを払っていないことが気になるので、ユナイテッド航空に連絡してみると、その料金は本来、乗る前に支払うとのこと。確かにチェックインでは、現地で払うように言われた。その電話の担当者は、行きのことは忘れてくださいといい、帰りは現地で払ってくださいと言った。
少し落ち着いてから、マークに電話で連絡することにした。
コンコードの町
モーテルからマークの携帯電話に連絡すると、4時に迎えに来てくれるという。それから、マークの娘のカサンドラ(2歳)と共に釣具屋に行き、タックルとライセンスを購入した。マークは、ガイドで使うルアーは貸してやるから、日本で使えるものを買えを言ってくれた。ルーミスのロッドとマップ買った。 店員がどこから来たのかの聞くので、日本からきたと応えた。マークが自分のガイドを受けるのだと説明すると、クレイジーだと呟いた。釣りをするためにここまでくるのは確かにクレイジーかもしれない。
<今回の宿泊先のプレミアモーテル。どうでもいいことだが、EZ8からプレミアと改名したらしい。EZ8で予約したら、プレミアだった・・>
<モーテルの敷地内にプールがある(右端)。20時くらいまで、子供たちが泳いでいた。確か犬も泳いでたなぁ・・>
マークが教えてくれたハンバーガーショップで夕食をとり、近くの薬局(薬局といっても大体のものは揃っている)で買い物をして、明日の準備をする。今回もやはり、タックルは的を外していた。まずライン。大体12lbクラスを巻いていたが、「Too Small」(全然細い)という。(英語ではsmallという)。釣行前にラインを巻き替えるからラインを抜いておくように指示された。こういったことから、すでにプラクティスになっているのだ。使うルアーは、バズベイト、テキサスリグがメインだといった。
ちょっと余談で、ハンバーガーの話。チェーンのファーストフードではなく、ハンバーガーをメインに扱っているショップで食べた。そのボリュームたるやキングバーガーの比ではない。まさに「肉」が挟まっているという感じだ。 パテの厚みは1cmを超えている。トマトにレタスにetc.ポテトも申し訳程度に袋に入っているがほとんどがトレイに広がっている。トレイ全体がポテトでその上にバーガーが乗っているという感じだ。日本のマクド感覚で2個頼もうなら、大変なことになりそうだった。
<コンコードの街。繁華街ではないので、郊外といった感じ。マークの家から車で5分あたり。歩いている人影はない・・なんせ日中は40℃近くになる・・>
コンコードの町は、前回のコロンビアリバーのケネウィックよりも町らしい。お店も歩いて行けるところにあったりして便利だ。気温は日中で大体40℃くらいになる。雨は降る様子はなかったが、先週はずっと雨で寒かったらしい。確かに朝は少し冷える。面白かったのは、気圧が朝になると下がることだ。なぜかは判らないが、気圧計が下がっているので雨でも降るかと思えば徐々に上がって行く。また朝になると下がって行くのだ。
デルタは、川なのかリザーバーなのかと聞くと、タイダルだと応える。タイダルとは、潮の満ち干の影響を受け、カレントや水位が大きく変化することを言う。これが、気圧の変化に関係しているかどうかはわからないが、マークは月齢表を熱心に眺めてその時間に合わせてプランを立てているらしい。デルタというフィールドはむちゃくちゃ広い。おそらく県が一つ収まるくらいの広さだろう。その広さで網の目のように水路が通っている。マークはGPSを使っていないが、ローカルアングラーでなければGPSは必須だろう。
迷ったら戻れない。アメリカでは、GPSはポイントを記録することが目的ではない。無事帰るために必要なアイテムなのだ。水深は大体3m~4m前後。全体的にシャローでバスはいってみればどこにでもいられる。実際このシャローウォーターが、面白い釣り展開してくれる。またしても常識を覆す釣りだった。それではその様子を請うご期待。
デルタ釣行:7月2日
朝の4時30分にマークが迎えに来てくれるので、3時30分に起きてシャワーを浴びた。30分くらいでラウンチングポイントには到着出来るが、ラインを巻きかえるための時間が必要だということで、早めにでることにしたのだ。フリーウェイを走り、途中ガソリンスタンドで氷を買う。ガソリンスタンドには、コンビニが付いているもんだ。ラウンティングポイントでラインを巻き変え、ルアーをセッティングして6時には出発した。
マークは、タイダルに合わせて釣るといい、クリークへと入っていく。ロックで護岸されたエリアだ。そのロックから2mくらい離れたところにウィードがある。そのロックとウィードの間をバズベイトで釣って行くのだ。
<マークのエリアはこんな感じの護岸エリア。タイダルに合わせてここを流して行くイメージだ>
マークは、さすがにガイドなので、おいしそうなポイントにはキャストしない。ファーストフィッシュは、まさにここぞというレイダウン。際にキャストして引いてくると、思ったとおりに出てきた。35cm大くらいのバスだ。キーパーサイズだが、デルタ初バスだ。サイズはイマイチだな、と思っていたが、マークが写真を撮ろうというので撮った。そんな写真をとるサイズでもないかと思ったが・・。
<デルタでの記念すべき初バス。40cm弱>
<マークの釣った40cmクラス。初日は、このサイズがグッドサイズだった>
それからもマークは、同じようなロック護岸エリアを釣る。午後になるにつれて、バイトはなくなる。それまでに釣ったのはいずれも35cmくらいのキーパーサイズだ。もの足りなさを感じながらも、やはりデルタといえども甘くないのか?と感じ始めていた。昼食は、マーク手作りのサンドウィッチだ。サンドウィッチといっても食パンではない。これがまた異常においしい。コーラも水もすべて準備してくれていた。
<こんなドックエリアもある。基本的に禁止エリアはないようなので、マナーの範囲でどこでも釣れる>
<飲みこまれたフックをエラから逆に抜き取っている。ラインを切って放すように言われたが、なんとか無事に取れた。マークは、僕を「ドクタートシ」と呼んだ>
午後になって、タイダルの向きが変わる。午前中のエリアに今度は逆から入る。釣り方もバズ、スピナベ、ベイビーホグのテキサスをローテーションさせる。この日、4本ほどスピナーベイトで取った。テキサスでは、小さいアタリを取って行く。しかし、一向にサイズが伸びない。数もサイズもマークが釣るより多く釣った。それは、もちろんいいエリアを回してくれるからだろう。
<スピナーベイトでの1匹>
マークがポッパーで誘うから、ホグを入れろといわれ続けるがあまり結果が出ない。たまにマークにフックアップするとそのロッドを僕に手渡す。「それは、違うゾ」と思いながらも、釣果は伸びない。最後に堤防のブレイクを釣っていた時、僕のテキサスにグッドサイズが掛かった。しかし、一瞬にして、ブレイクしてしまった。ロックエリアを攻めてラインが痛んでいたのだ。マークがラインチェックをして付け替えてくれた。ガイドとしては至れり尽せりの対応だった。
<スピナベにきたストライパー。エリアにきて1投目だった>
結局、本数にして20本弱。サイズにして35cmアベレージだった。デルタといえばランカークラスボコボコをイメージしていた僕にとって、またしてもアメリカの厳しさを見たか?と思った。しかし、この思いは翌日には覆る事となるのだ。
デルタ釣行:7月3日
今日は、マークは別のゲストをガイドする。マークが4時30分にモーテルに迎えに来てくれて、ゲストを一緒に迎えに行った。ある駐車場で待ち合わせ、5時にゲストが現れた。50前のオジサンだった。さっそくラウンティングポイントへ向かう。
例のガソリンスタンドで氷を買って、現地に向かった。マークはボートを準備をして、僕は今日ガイドしてくれるボビーを待つ。ボビーは今日は夜勤で6時に仕事が終わるらしい。すぐに来てくれても6時半なので、それまでバンクフィッシングをしていろとマークが言う。マーク達が出て行く前に、僕はホグで35cmくらいのバスを桟橋の手前で釣った。マーク達がまだ見えるところにいるころ、ボビーが現れた。急いで来てくれたらしい。マーク達とほぼ同じスタートとなった。
ボビーは、フロッグとバズベイトを準備しろといって、スロープを離れるとすぐにアシの中に入っていった。普通はバスボートでは入ろうとはしない場所だ。彼は「ショートカットだ」といって笑っていた。要は近道だ。ボビーのエリアはマークとはずいぶんと異なっていた。
<ボビーの試投する後ろ姿。マークとのエリアの違いが直ぐに見て取れるだろう>
ショートカットしてすぐ脇の葦際をバズで流して行く。ボビーはやはりガイドの経験がないのかおいしいところは自分で打っていってしまう。僕は常にフレッシュウォーターを求めてボビーとは反対のエリアを狙っていた。すぐに彼にバイトがあった。サイズは40cmオーバー。明らかに昨日とはサイズが違う。僕は、某日本メーカー製のバズベイトを使っていたが。サウンドが明らかにボビーのものと比べると小さい。
実は昨日はゲーリーバズを使っていたが、サイズが思ったより小さかったので、サイズの小さい日本メーカー製のバズベイトに変えていたのだ。ボビーは、そのバズベイトをみせろ、いう仕草をして手に取った。そして「これではダメだ」といった。そこでゲーリーバズを見せた。ボビーは、ゲーリーのバズベイトの方がグッドだといった。すると直ぐに僕にもバイトがあった。しかし、ばらしてしまう。グッドサイズだった。一通り流すとボビーは直ぐに移動した。次のエリアではバイトが無かった。ボビーは直ぐに見きると対岸のアシエリアに向かった。
そこはアシの沖にウィードが点在している。引くなら、スピナベでもよいが、バズベイトがグッドサイズが出るとボビーはしきりに言う。そこでも僕のバズベイトにバイトがあるが乗らない。ボビーがトレーラーフックをつけてくれてすぐにグッドサイズがキャッチできた。
<ボビーのフロッグエリア。水深はどこでも3m前後>
<こんな水路にも入ったが、やはりマークとはエリアの質がかなり異なる。マークのエリアと比べてみて、同じフィールドとは思えないほどだ>
それから、日が上るに釣れてボビーはウィードパッチエリアに移動した。ウィードモスが点在しており、水の動きは少なく藻も多い。日本なら水が悪いと見切ってしまうようなエリアだ。ボビーはその水面のウィードのモスにフロッグを投げる。すぐにグッドサイズをゲット。すべて40cm後半だ。僕はフロッグを使ったことがなかったので、ボビーがいろいろと教えてくれた。そして念願のフロッグフィッシュをゲットすることが出来た。
トップの釣りはフレッシュウォーターに勝るものはない。僕は、ボビーの打ち逃したスポットを丹念に攻めて行った。一度出て乗らなかったら、少し間をおいてリトライする。しかし、あまりにも釣果(反応)の違いがある。ボビーは見かねて、「これを使え」と自身のバズを手渡してくれた。すると出るのだ。こうしてゲットした魚はすべて40cmオーバーだ。40℃近い炎天下でバズとフロッグだけで釣って行く。まさにストロングパターンだ。1時間に1~2回のバイトしかないが、確実に40cmオーバーだ。
ボビーは、「この釣りはサイズがいい。辛抱して投げつづけることが必要だ。キャスト!キャスト!キャスト!」という。まさにストロングだ。マークが釣ったアシエリアにも行った。僕が初日にストライパーを釣ったエリアだ。ここでもマークとボビーの釣り方の違いは顕著だった。 マークがアシの手前のウィードを釣るのに対して、ボビーはアシに絡むゴミやウィードを丹念にフロッグで釣る。すると出るのだ。結局、僕が5本、ボビーが15本ほど釣った。すべてグッドサイズだ。僕は、本当に興奮した1日を送った。
帰り際、ボビーはバズベイトを「手土産」だといってくれた。そして、「日本でもおそらく通用するだろう」といった。
<ボビーとの釣行は、このサイズがアベレージ。デルタバスという感じだ>
カルカッタ201を使っていた僕の肩は上がらなくなっていた。写真を取る時、バスを持ち上げるのに精一杯だった。テンポが速いのかなりのキャストはしているだろう。軽いリールの必要性を実感してしまった。日本に帰った翌週。僕は整骨院で治療を受けていたのだった・・。
しかし、一見1時間に1バイトの釣りというと効率が悪そうだが、トーナメントでは明らかにボビーは上位入賞していただろう。これぞ、アメリカンストロングパターンという釣りだった。一睡もしていない状況での、あの集中力と体力。やはり侮れない。
ラウンティングポイントに戻るとマーク達は戻っていた。僕達のバスを見て、マークは少し唖然としていた。おそらく昨日と同じ釣りをしていたとしたら、サイズは出ていないだろう。 同じコンディションでも、釣り方一つで釣果がここまで違ってしまう。非常に良い経験をしたと思っている。
カリフォルニア・デルタ再考
カリフォルニア・デルタは、非常に興味深いフィールドだった。その広さ。そしてバリエーション。入り組んだクリークは、タイダルによって流れが変わり、そしてロックエリア、ベジテーションエリア、マンメイドエリアとストラクチャーも様々だ。
マークがクリークを中心し組み立てたのに対して、ボビーはスプレッドエリアを中心に組み立てた。方やリバータイプフィッシング、方やレイクタイプフィッシングという感じだ。同じフィールドでありながら、まったく異なるフィールドで釣りをしているかのような錯覚すら覚える。
さらに突出していえるのは、全体的な水深が浅いということだ。深いところで13フィート程度だ。浚渫やブレイクなど大きな変化も少ない。つまりバスはどこにでもいられる訳だし、その中でどのファクターに重点を置くかによって結果も大きく異なってしまう。
だから余計に釣りを難しく、また面白くするのだ。ボビーがトップにこだわり続けた理由もそこに尽きるはずだ。どんなに炎天下であろうともバスは13フィートよりも深く潜ることはできない。ボビーは、ウィードにしか涼を得ることができないエリア、つまりスプレッドエリアを敢えて選択し、そのわずかなシェードにつくバスを狙っていったのだ。水深が浅いため、トップに充分反応でき、ウィードレス効果も高い。つまり効率的なのだ。一見アタリが少なく非効率に感じてしまうが、エリア、状況を加味すると効率的な攻め方だといえる。
マークのパターンは、クリークをタイダルに合わせて釣っていくパターン。これも間違いではない。なぜなら流れがあることにより魚は活性があがるためだ。しかしながら今回の印象では、魚影が薄すぎる感があった。1クリークを流していって、30cmクラスを数匹。運がよければグッドサイズが来るといった感じだ。それであるならば、クリークのグッドスポット(レイダウンやインターセクション)をランガンした方が、効率的でグッドサイズがとれたと思う。マークがそのパターンでガイドしたのは、サイズよりも数を出したかったからかもしれない。
いずれにせよまったくと言っていいほど、結果は異なることとなってしまった。そしてまたしても常識を覆されてしまった。炎天下での水の動きがないシャローエリアでのトップフィッシング。これが爆発したのだ。このパターンは、必ず日本のフィールドにも当てはまるはずだ。広いシャロー、そしてウィードのシェード・・。
今回のデルタ釣行は、運よく二人のまったく異なるガイドを受け、まったく異なる結果となった。この経験は、自分自身にとって更なる糧となったことを確信している。「経験は力なり」。まさに、ゲームフィッシングには外せない言葉だと痛感した釣行であった。
いろいろとお世話になったマーク夫妻、そして豪快な釣りを見せてくれ最後には湖にはまり楽しませてくれたボビーに改めて御礼を言いたい。マークの奥様のリサと娘のカサンドラと一緒に、マークの家でバーベキューをごちそうになり、いろいろとお世話になった。こうした出会いがあるのもアメリカ参戦の楽しみの一つだ。しかし、家や庭の広さに驚愕した。。 庭は、近所の小さい公園くらいあったぞ。。
最後に
こうして僕は、一旦、「アメリカ行きのバス」を降りた。次のチャンスがあるならば、できれば片道キップで行きたいものだ。また次の機会にバスに乗るまでには、しばらくは時間を置くことになるだろう。 「アメリカ行きのバス」は、いつでも次の乗客を待っているのだ。